オーバルのレースではコース上で事故が起こるとペースカーを入れてレースを一時中断します。これを「フルコースコーション」とか「フルコースイエロー」と呼びます。20年前ではアメリカ独自のルールでしたが、今では「セーフティカー」ルールとして世界中の様々なカテゴリーで用いられています。
このフルコースコーションが出た時には、周回遅れだった車の1台が救済され、同一周回の最後尾に戻る事が出来ます。これを「ラッキードックパス」と言います。ラッキードックとはAARON’Sという会社のマスコットキャラクターの名前となっています。NASCARはルールの命名権まで商売にしているのです。ゆえにスポンサー契約が切れれば、このルールの名前も変わります。
ラッキードックパスを受ける資格があるのは
フルコースコーションが出た瞬間に周回遅れの先頭を走っていた車
です。つまり、周回遅れの車の中でもラッキードックパスの権利を巡って競争があるのです。ちなみに1周遅れの車がおらず、2周遅れの車がいた場合は2周遅れから1周遅れに戻る事が出来ます。かつてワトキンスグレンでカイルブッシュが5周遅れからコーション5回を経て同一周回に戻り、そこから十台以上抜いてトップ10フィニッシュをした事があります。周回遅れになっても諦めてはいけないのがNASCARです。
ラッキードックパスはNASCARオリジナルのルールなので、インディカーには存在しません。ところが、何故かF1には同じようなルールが存在します。2000年代後半にセーフティカールールがコロコロ変わって、気がついたら「セーフティカー出動後、周回遅れの全車がラップバックしてよい」というようになっていました。NASCARより気前がいいのです。